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緑イ貝抽出脂質の関節炎における滑膜の炎症を抑制する可能性

小動物臨床 2006 Vol.25 No.3

関節炎自然発症犬および実験的関節炎作出ラットにおける緑イ貝抽出脂質(GMEL)経口投与効果の臨床学的考察

奥村正裕1, CHO Heeduck1, 高木哲1, 山崎孝一2, 島田健次郎2, 藤永徹1

  1. 北大 大学院獣医学研究科
  2. 協和発酵工業
要約

3種類の関節疾患(炎症性関節症、変形性関節症、関節リウマチ)を発症したのべ39頭の犬に緑イ貝抽出脂質(GMEL)を3~4週間経口投与し、その効果を罹患関節の疼痛および跛行の状態により評価した。その結果、GMEL投与前後で、疼痛スコアの改善は平均0.4ポイント、跛行スコアの改善は平均0.6ポイントであった。また、総合評価では、有効あるいはやや有効と判断されたものが29/39、変化なしが2/39、無効が7/39、そして異常反応により評価されなかったものが1/39であった。また、ラット24匹を1群6匹としてGMEL投与群、メロキシカム投与群、陽性対象群および陰性対象群に分け、キモパパインを膝関節腔内に投与し実験的関節炎を惹起させたモデル動物を用いて、各処置3週間目および6週間目の軟骨および滑膜の組織学的所見と関節液中ヒアルロン酸の濃度を評価した。その結果、GMELを経口投与したラットでは、キモパパイン誘発関節炎における組織学的障害が抑制され、関節液中ヒアルロン酸濃度の減少度合いが少ないことが観察された。これらの結果から、GMELには関節炎における滑膜の炎症を抑制する効果があることが示唆された。