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学会・研究発表

グリピンの皮脂産生促進作用

2007年9月5日(水)〜8日(土)にスイス・チューリッヒ、イルチェル大学にて開催された第37回ヨーロッパ皮膚科学会(ESDR)で、グリピン(マイタケ抽出物)の皮脂産生促進作用が報告されました。

第37回 ヨーロッパ皮膚科学会

Gripin®(マイタケ抽出物)クリームの乾皮症に対する臨床効果

佐藤隆1,秋元賀子1,長尾美枝2,高橋雅夫2,3,伊東晃1

  1. 東京薬大・薬・生化、〒192-0392 東京都八王子市
  2. 株式会社ハイマート、〒103-0027 東京都中央区
  3. Immuno Research Ltd.、ニュージーランド、オークランド
目的

皮脂は、皮表で皮脂膜を形成することで皮膚の生理機能の維持に重要な役割を担っている(Fig. 1)。すなわち、皮脂量の減少は皮膚バリアー機能を低下させ、肌荒れや乾燥肌(乾皮症)、さらにそれに伴う痒み(掻痒)の発症にも関わると考えられる(Fig. 1)。したがって、皮脂産生をコントロールすることは、肌荒れや乾燥肌の予防・改善のみならず、乾燥から来る皮膚の痒みの軽減、さらには乾皮症の治療にも有効であることが期待される。本研究では、ハムスターおよびヒト皮膚においてGrifola frondosa (マイタケ)子実体のエタノール抽出物 (Gripin®) (Fig. 2)による皮脂産生調節をin vivo およびin vitroにて検討した。また、Gripin®の皮脂産生調節作用をAgaricus blazei murrill (アガリクス) のそれと比較検討した。

実験方法
  • 処理方法
    Gripin®(100-400 mg/ml) もしくはAgaricus blazei murrill (アガリクス)のエタノール抽出物(100-400 mg/ml)にてハムスター脂腺細胞を処理し、血清を含むDMEM/F12培地で7日間培養した。
  • Oil red O染色法
    Gripin®もしくはアガリクスにて脂腺細胞を処理した後、0.3% oil red Oを含むイソプロパノール:蒸留水(3:2, vol:vol)混合物で染色し、光学顕微鏡付属のデジタルカメラで撮影した。また、細胞をMayer’s hematoxylin solutionで対比染色した。
  • 皮脂成分の定量分析
    超音波処理を行い得られた細胞破砕試料を前述のように自動薄層クロマトグラフィー(イアトロスキャン)で解析した(1)。また、細胞破砕試料を用いて細胞内TG量をLiquitech TG-IIにて販売元の取扱書に従い測定した。細胞内DNA量を前述のようにauthentic salmon sperm DNA (6.25-100 mg/ml)および3,5-diaminobenzoic acid dihydrochlorideを用いて測定した(2)。
  • ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)活性
    Gripin®で処理したハムスター脂腺細胞のDGAT活性を前述のように1,2-dioleoyl glycerolおよび [14C]palmitoyl-CoAを用いて測定した(3, 4)。
  • ハムスターにおけるin-vivo試験
    3週齢の雄性ゴールデンハムスターの耳介部に1-4%のGripin®もしくはアガリクス抽出物を含む95% ethanol/5% glycerolを14日間塗布した。また、コントロールとして溶媒のみを同様に塗布した。処理終了後、耳介部の冷凍切片を作成し、前述と同様、0.3% oil red Oにて染色、 Mayer’s hematoxylin solutionにて対比染色した。oil red O染色した耳介部の組織切片を、画像解析・定量化ソフトLumina Vision (Mitani Co., Japan)を用いて脂肪滴の割合を定量した。
  • 健常被験者におけるGripin®クリームのin vivo試験
    Gripin®クリーム(0.1および1%)およびクリーム基剤を1日3回14日間、健常被験者(男女7名、平均年齢22-41)の下腕に塗布した。塗布部位の残存皮脂を脱脂綿にアセトンを含ませたもので除去し、1時間後ステンレスカップを用いて新たに分泌された皮脂をアセトンで2回抽出した。抽出した皮脂をイアトロスキャンにて上記の皮脂成分量を解析した。
  • 統計分析
    データは平均値±標準偏差(SD)で示した。一元配置分散分析(ANOVA)およびFisherの多重検定を行ない、有意水準をp<0.05とした。
結果
  1. ハムスター脂腺細胞において、Gripin®は細胞内の脂肪滴形成を用量依存的に増加した(100-400 mg/ml) (Fig. 3)。
  2. ハムスター脂腺細胞において、Gripin®は皮脂の主成分であるトリアシルグリセロール(TG)の産生を濃度依存的に促進した(Figs. 4および5)。また、ハムスター脂腺細胞におけるTG産生促進は、TG生合成の律速酵素であるDGATの活性上昇に起因することが判明した(Fig. 5, 挿入図)。
  3. ハムスター耳介部皮膚に1-4% Gripin®を局所塗布したところ、皮脂腺における皮脂の蓄積量が増加した(Fig. 6)。
  4. Agaricus blazei murrill (アガリクス)のエタノール抽出物は、ハムスター皮脂腺および脂腺細胞においてほとんど皮脂産生促進作用を示さなかった(Figs. 3, 4および6)。
  5. 0.1および1%のGripin®クリームを塗布した被験者の大部分において、TG、スクアレン、遊離脂肪酸、コレステロールといった皮脂成分が基剤塗布部位と比較して増加した(Table 1)。
ハムスター脂腺細胞におけるグリピンによる脂肪滴形成促進作用
Fig 3. ハムスター脂腺細胞におけるGripin®による脂肪滴形成促進作用
ハムスター脂腺細胞におけるグリピンによるトリアシルグルセロール(TG)産生促進
Fig 4. ハムスター脂腺細胞におけるGripin®によるトリアシルグルセロール(TG)産生促進
グリピンを処理したハムスター脂腺細胞における皮脂組成分析とDGAT活性
Fig 5. Gripin®を処理したハムスター脂腺細胞における皮脂組成分析とDGAT活性
グリピン塗布によるハムスター皮脂腺における皮脂蓄積増加
Fig 6. Gripin®塗布によるハムスター皮脂腺における皮脂蓄積増加

グリピンクリームを塗布した健常被験者における皮脂産生促進効果

Table 1. Griipn®クリームを塗布した健常被験者における皮脂産生促進効果

結論

Gripin®は、皮脂腺において皮脂の生合成を促進する新規素材であり、皮膚バリアー機能調節に基づく肌荒れ、乾燥肌の予防・改善のみならず、乾皮症の治療薬としても有用であると期待される。

参考文献
  1. Sato T, Imai N, Akimoto N, Sakiguchi T, Kitamura K, and Ito A. J Invest Dermatol 117:965-970 (2001)
  2. Akimoto N, Sato T, Iwata C, Koshizuka M, Shibata F, Nagai A, Sumida M, and Ito A. J Invest Dermatol 124:1127-1133 (2005)
  3. Iwata C, Akimoto N, Sato T, Morokuma Y, and Ito A. J Invest Dermatol 125:865-872(2005)
  4. Sato T, Takahashi A, Kojima M, Akimoto N, Yano M, and Ito A. J Invest Dermatol, in press (2007)