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学会・研究発表

マイタケ由来新規スキンケア素材の開発

2009年7月1日(水)〜3日(金)に東京ビッグサイトにて開催された医療品原料国際展 ファーマiジャパンで、マイタケ由来成分に皮膚における皮脂およびヒアルロン酸産生促進作用とその新規有用性について報告しました。

医療品原料国際展 ファーマiジャパン

マイタケ由来新規スキンケア素材の開発

佐藤隆,伊東晃

東京薬科大学薬学部 生化学・分子生物学教室
目的

皮脂は皮表で皮脂膜を形成し,皮膚の生理的機能の維持に重要な役割を担っている(Fig. 1).すなわち,皮脂量の減少は皮膚バリアー機能を低下させ,肌荒れや乾燥症(乾皮症)およびそれに伴う掻痒の進行に関わる.したがって,皮脂産生をコントロールするという新しい発想は皮膚機能の維持・改善、さらに疾病予防に有効であると期待される.一方,ヒアルロン酸(HA)は皮膚での保水性および弾力性の維持のみならず,細胞の増殖・分化や移動活性の調節にも寄与することで皮膚バリアー形成や創傷治癒において重要な役割を担っている.また,HAは主に真皮の線維芽細胞において産生され,その生合成はHA合成酵素(HAS)により調節されている.すなわち、皮膚でのHA産生を促進することは肌の潤い増強のみならず,皮膚バリアー機能調節やアンチエイジング(抗老化)効果にも繋がると考えられる.本研究では,Grifola frondosa (マイタケ)子実体のエタノール抽出物(グリピン®、Gripin®) (Fig. 2C)の新規スキンケア素材としての有用性をハムスター皮脂腺由来細胞(脂腺細胞)1, 2)およびヒト皮膚線維芽細胞において皮脂およびHA産生調節の観点からin vivo およびin vitroにおいて検討した.さらに,軽度から重度の乾皮症患者の下腕および下腿に0.2% Gripin®クリームを塗布し,その臨床効果をも検討した。

ハムスター皮膚組織
Fig 1. ハムスター皮膚組織
Grifola frondosa (マイタケ)子実体のエタノール抽出物 (グリピン)
Fig 2. Grifola frondosa (マイタケ) 子実体のエタノール抽出物(Gripin®)

結果
  1. ハムスター脂腺細胞をGripin®で処理した際,細胞内の脂肪滴形成が増加した(400 mg/ml) (Fig. 3).この脂肪滴形成はGripin®の濃度依存的に促進され,かつ皮脂の主成分であるトリアシルグリセロールのde novo合成促進に起因することが判明した(結果省略).
  2. ハムスター耳介部へ2%Gripin®を局所塗布したところ,皮脂腺および毛包における皮脂の蓄積が増加した(Fig. 4).
  3. 0.1および1%のGripin®クリームを塗布した健常人において,トリアシルグリセロール,スクアレン,遊離脂肪酸,ワックスエステルといった皮脂成分量は、基剤塗布部位と比較して増加した(Table 1).
  4. 乾皮症患者に0.2%Gripin®クリームを1週間塗布したところ,下腿および足背の鱗屑や亀裂は改善した(Fig. 5).また,12名の被験者のうちほとんどの患者において臨床的改善が認められた(Table 2).
  5. ヒト線維芽細胞においてマイタケエキスは濃度依存的にHAS-2 mRNA発現を促進した(Fig. 6).
  6. HAS-2遺伝子発現促進に伴い培養液中のヒアルロン酸量がマイタケエキス処理により増加した(Fig. 7).また,このヒアルロン酸量の増加は,ヒアルロン酸合成阻害剤の4-メチルウンベリフェロンにより濃度依存的に抑制された(Fig. 7).
  7. 健常人において0.2%Gripin®クリームの塗布により,皮表水分含量が有意に増加した(Fig. 8).

ハムスター脂腺細胞におけるグリピンによる脂肪滴形成促進作用
Fig 3. ハムスター脂腺細胞におけるGripin®による脂肪滴形成促進作用
グリピン塗布によるハムスター皮脂腺における皮脂蓄積増加
Fig 4. Gripin®塗布によるハムスター皮脂腺における皮脂蓄積増加
グリピンクリームを塗布した健常人における皮脂産生促進効果
Table 1. Gripin®クリームを塗布した健常人における皮脂産生促進効果
グリピンクリームの乾皮症に対する効果
Fig 5. Gripin®クリームの乾皮症に対する効果
乾皮症患者の下腕および下腿における症状の改善
Table 2. 乾皮症患者の下腕および下腿における症状の改善
ヒト皮膚線維芽細胞におけるグリピンによるヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2)の遺伝子発現促進
Fig 6. ヒト皮膚線維芽細胞におけるGripin®によるヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2)の遺伝子発現促進
ヒト皮膚線維芽細胞におけるグリピンによるヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2)の遺伝子発現促進
Fig 7. ヒト皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸(HA)産生に対するGripin®の促進作用
グリピンクリームによる皮膚の潤い促進効果
Fig 8. Gripin®クリームによる皮膚の潤い促進効果

結語

グリピンは皮脂腺における皮脂産生促進作用4)に加え,真皮でのヒアルロン酸合成を促進することで,肌本来の保湿やバリアー機能を高める働き(W効果)がある

参考文献
  1. Sato T, Imai N, Akimoto N, Sakiguchi T, Kitamura K, and Ito A. J Invest Dermatol 117:965-970 (2001)
  2. Sato T, Takahashi A, Kojima M, Akimoto N, Yano M, and Ito A. J Invest Dermatol 127:2740-2748 (2007)
  3. Akimoto N, Sato T, Iwata C, Koshizuka M, Shibata F, Nagai A, Sumida M, and Ito A. J Invest Dermatol 124:1127-1133 (2005)
  4. Nagao M, Sato T, Akimoto N, Kato Y, Takahashi M, and Ito A. Exp Dermatol, in press (2009)